こんにちは!
親子関係コーディネーター 松生典子です。
ブログを訪ねてくださってありがとうございます。
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運動会シーズンに合わせて、行事が苦手な発達障害(グレーゾーン)の子どもの困りごとと、周囲の大人がしてあげたいことを4回シリーズで書いています。
シリーズ#1:運動会当日の不安
シリーズ#2:感覚過敏と行事
シリーズ#3:運動が苦手な発達ちゃん
シリーズ#4:勝ち負けにこだわりすぎて運動会がつらい
今日はシリーズ#4、最終回です。
負けるかもしれないから運動会に出たくない
・白組が負けるかもしれない
・50m走で一番になれない
これは、息子が1年生の運動会に出られなかった時に、
どうして運動会に出たくないのかの理由をたくさん教えてくれたうちの2つです。
「勝ち負け」や「1番」にこだわりすぎて、運動会に参加すらできない状態でした。
グレーゾーンの中でもアスペルガーの傾向をもったお子さんに多くある特性です。
この特性を、「白黒思考」「二極思考」「0-100(ゼロヒャク)思考」
などと呼んだりします。
「負けるのは嫌だな~」
とか、
「一番になりたい!」
などは誰でも思うことですし、そういう気持ちは必要ですよね。
そして、
「勝ってやるんだ」という目標を自分の中に持ったり、
「学校行事だから参加すべきもの」という、そもそもの枠組みに従って行動できるのが普通です。
けれど、特性としての「白黒思考」では、
「負けるのが嫌」「一番になれなかったらどうしよう」という気持ちが、
日常生活や、行事の進行をストップさせてしまうほどの足かせになってしまうことがあるのです。
なぜなら、「まっ白」や「100」以外は、凸凹ちゃんにとっては「黒」だからです。
自分の中でOKにできる部分がとても少ないのです。
「黒」の状態は、凸凹ちゃんにとって、とてもとても不安で、
このこだわりがもとで、怒ったり、癇癪を起こしたり、パニック(固まる)になったりします。
運動会に出られないのは、大きく言えばパニックの部類に入るかと思います。
実際に息子はそのときに、
「頭の中がまっ白になって、何も考えられなくなるかんじ。」
と、自分の中で起きていることを冷静に教えてくれました。
そのように捉えてしまう脳の特性なのですね。
決して、わがままなどの性格の問題ではないということを、我々周囲の大人がしっかり理解したいところです。
あるていどで「よし」とすることができないため、しょっちゅう
”できない体験”を繰り返していることは、
本人の自己効力感をどんどん引き下げてしまいます。
子ども本人の生きにくさやつらさは非常に深刻です。
運動会は勝ち負けだけじゃない!
「白黒思考」によって、運動会を”勝ち負け”という観点で強く捉えてしまい、そこにとらわれてしまっている状態の発達ちゃん。
こんな場合、どうすればよいでしょうか?
息子の場合、当時の校長先生の素晴らしい対応で、
息子の固定した考え方のロックを見事に外して下さいました。
運動会で校門をくぐれず、2時間ほど小学校の向かいの公園から運動会を見ていた息子は、
「校長先生に、なんでオレが運動会に行けない気持ちなのかを言いたい。」
と言って、校長先生や来賓の方がいらっしゃるテントへ向かいました。
息子は、校長先生が大好きなのです。
パイプ椅子に座って来賓の方とお話をされていた校長先生は、
息子が来ると席をひとつ譲ってくれました。
「なんでこんなところにいるの?」なんて聞きませんし、
「おお、ここに座れ座れ!」などと大げさに歓迎するわけでもありません。
談笑を続けながら、ごく当たり前のように息子を座らせ、
ときどき息子の頭をやさしくポンとなでたりされました。
まずは何も言わずに受け入れてくださったことで、
学校に入れずコチコチに固まった息子の気持ちのトゲが、
じんわりと溶けていくように見えました。
もうそれだけで今日は良かったねー、と思えるほどです。
校長先生は、本当に子どもが大好きで、誰よりも大きな声で応援されて、
とくにリードされているチームや生徒に温かいエールを送ってくださいます。
また、ダンスなどの披露では、手メガホンで、「みんな、かっこいいよ~!!」と、
元気になれる声援を、本気でなさいます。
来賓の方々にも、「ほんとに、みんなキラキラしていますよねえ?」と、
心の底から子どもたちを肯定されているのがにじみ出ていました。
そんな校長先生の隣の特等席で、最初は競技にはあまり目をむけずにいた息子は、
だんだんと運動会に注目するようになっていきました。
1年生の走り競争では、
「ほら、次が○○(お友達の名)だよ、見て!」と校長先生に教え、
校長先生が応援しているのと一緒に「行けー!」と応援。
紅白玉入れでは、息子の白組が不利で、
校長先生と一緒に「頑張れ頑張れ」と応援したけれど負けてしまいました。
「負けたけど、みんな一生懸命がんばってたね。素敵だった。」
と校長先生は息子にご自分の感想をおっしゃられ、うなずく息子。
”負けたって頑張ること自体が大切なんだよ”なんて指導をしないのに、
ちゃんと息子を導いて下さるのです。
素晴らしいなと思いました。
また、校長先生がお手洗いに立たれるとき、
「○○ちゃん(息子の愛称)に校長先生の身代わりをお願いするね。」
と言い残され、息子はしっかりとその役割を果たしました(笑)。
「オレ、校長先生の身代わりまでしたんだぜ。」と、あとで誇らしそうに言っていたことを思い出します。
校長先生がしてくださったことまとめ
運動会の帰り道、息子は
「2年生から6年生までは、運動会行く。」
と言いました。
息子の不安な気持ちや、運動会を勝ち負けで認識していたことや、参加できない挫折感などを、
見事に吹き飛ばしてくださった校長先生の対応を、整理してみたいと思います。
②”勝ち負け”の結果より、頑張っている”その時”にフォーカス
③「役割」を与えた
①最初の無条件の受け入れ
これが一番のポイントだったと思います。
学校に入って校長先生のもとに行ったのは、簡単にできたことではありません。
2時間苦しんで、やっと少し前進できた結果なのです。
あの場面で”着替えて自分のクラスに行かせる指導”になっていれば、もう息子のやる気はしぼんでしまって膨らまなかったと思います。
校長先生は、全く何も聞かずに息子の居場所を提供して下さいました。
「自分の気持ちを言いたい。」と言って校長先生のもとに来た息子でしたが、
そういえば結局最後までそんな話はしませんでしたね~。
そんな必要はなくなったからです。
”無条件で受容されること”は、
問題を起こしやすい発達ちゃんにとって、どうしても経験不足になりがちです。
受容されることによって、問題が問題でなくなることが、
その子の生きやすさや安心感へと直結していきます。
②”勝ち負け”の結果より、頑張っている”その時”にフォーカス
校長先生と一緒に応援することによって、一生懸命な”その時”に、気持ちをフォーカスできました。
そして、”勝ち負け”の結果はオマケとなり、勝ち負けへのこだわりのブロックが外されたようです。
負けそうでドキドキしたり、頑張る姿に大きな声で声援を送ったりすることが、リアルな爽快感となって、こだわりなんか吹き飛んだのです。
フォーカスする部分(視点)を他のところへうまく持っていってくれたのですね。
2年生での運動会では、別の学年の走り競争を一生懸命応援する息子の姿があり、すごく嬉しかったです。
③「役割」を与えた
運動会に自分の席におらず、体操服にも着替えていない息子でしたが、
”校長先生の身代わりをお願いね”と、「役割」が与えられました。
「役割」は、集団へ所属したいという、人の欲求を満たします。
運動会に参加できていない、という一種の挫折感と疎外感を感じていた息子にとって、
「役割」を果たしたことが、運動会に参加したという達成感と満足感になりました。
初めてのことがとても苦手な凸凹ちゃんは、ただ見学するだけでももちろん次回から参加できるためのステップになりますが、なにか「役割」があれば、ぐんと運動会へのモチベーションを後押しできますね。
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発達ちゃんと運動会の気になる関係を、
息子の経験をベースに全4回シリーズで綴ってみました。
発達ちゃんの特性は多岐にわたり、一人ひとり違いますので
あなたとお子さんなりに奮闘されていることと思います。
この記事が少しでも助けになれば嬉しいです。
最後までお読みくださり、ありがとうございます(^o^)
お子さんとお母さん、
そしてご家族の未来を変える力を、
一緒に育んでいきましょう!